つぶやき前ちゃん    「ハエが出た」

2024年07月08日 07:12

ソワァーで横になって、うたた寝。
カーテンの隙間からチラチラ射し込む夕陽に目が覚める。しばらくダラダラしていると、黒いものが目の前を行ったり来たりしている。ハエだ!ここでは、サッシの隙間から入ってくるアリ以外の虫は見たことがない。やおら立ち上がり、そこら辺にある新聞紙を丸め、仕留めようと構える。敵もその空気を感じたのか中々側に来ない。チャンス!塚原卜伝ばりに新聞刀を振り落とす。しかし、不摂生極まりない還暦男を嘲笑うかのように、ヒラリとかわし見えない所に行ってしまう。少しすると、また目の前に現れる。同じことを何度か繰り返す。ダメだ、新聞刀を、放り捨てた。まてよ、ハエは何かしたのだろうか?別に何も迷惑を受けてはいない。無駄な殺生かもしれない。私は静観する事にした。考えてみれば、ハエもこんな所に迷い込んでしまい、人間臭いところでただグルグル飛び回るだけで、しまいには力尽きて死んでしまう。悲しい。実は、このグルグルは、なんとかして外に出る隙間をさがしてるのではないか。必死なのか。私はカーテンを開け、サッシをフルオープンにした。帰るんだ、自然な世界に、ほら、急いで。

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